米国フロリダ州オーランドにある難病を患う子どもとその家族を支援するNPO団体、
Give Kids The World(以下、GKTW)の創設者、ヘンリ・ランドワース氏が、
16日(月)に91歳で、ご逝去されました。

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ヘンリさんと私の出逢いは、2002年11月でした。
フロリダの降り注ぐ太陽のもと、約1時間にわたって、
写真にある青いコーヒーカップ型のベンチに二人で座って、
話をしたのが初めての出逢いでした。

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その日、私は会社の出張で、フロリダにいました。
当日の朝にいきなりGKTWのオフィスに電話して、彼との面談をお願いし、急遽、逢うことができました。

「私は、正直、日本人には、あまり良い印象を持っていません。
でも、あなたは少し違います。
それは、あなたがディズニーの人間だということをスタッフに聞いたからです。
あなたに、アジアの、日本の難病を患う子どもたちに、ディズニーランドへ招待して欲しいのです。
それが彼らの目標、ですから。。
そのお願いをするために、あなたに私は逢っています。。。」

最初の一言が、いきなり、こんな感じでした。

正直、「なに様?」って、感じ悪い印象で、私は出逢いました。
しかし、1時間におよぶ二人での会話で、私の人生は大きく変わりました。
このヘンリさんとの出逢いが無ければ、いま、の私はありません。
そのような大きな方と、なりました。

ヘンリさんは、私が知っているだけでも…3度、亡くなりました。
一度目は、13歳の時。
ユダヤ人として、強制収容所へ家族4人で連行され、最初の強い暴行を受けた時。。。
殆どの収容者が、その時、亡くなったそうです。
ヘンリさんは、放置された太陽の光も入らない、真っ暗な部屋から生還されました。
頭部前部には、その時の大きな傷が残っていましたが、その時、亡くなったも同然、と話して下さいました。

二度目は、18歳の時。
強制収容所での最期の日、です。
ドイツ兵に銃口を向けられ、「号令」とともに射殺されるとき、
目の前のドイツ兵がヘンリさんに小さな声で囁いてくれたそうです。
“号令とともに、走って、あの森の中に逃げ込みなさい。
ドイツは間もなく、戦争に負けるから、私はもう、人をこれ以上、殺したくないから。。。
君は、これから…生きなさい。。。”
って。
ヘンリさんは、その言葉だけを信じて、森に駆け込み、逃げぬいたそうです。

そして三度目が…今回、だったのでしょう。
ヘンリさんは、自分自身のそのような経験と難病を患う子どもとを、
“同じ”として、私にこう、話してくれました。

“難病とは、病気の原因が解らない、対処方法が解らない、
そして、いつまで苦しむのか夢や目標も持てない、という解らないことだらけのことなのです。

私の“あの時”も、まさに、同じだったのです。
なぜ、人が人を殺すのか?
そのような環境の中、私はどうしたらいいのか?
そして…夢も希望も持てない。。。

それが、“あの時”の私でした。

それが「同じ」と判ったとき…、
いま、いのちがある私自身にすべきこと、できることを考えました。
それが、このGKTWの設立した理由です。。。”

さらに、ヘンリさんは、初めて出逢った私に、こう話してくれました。
初対面にもかかわらず、あまり良い印象を持っていない日本人である私に…、こう、話してくれました。

“Give & Give。。。
いま、あなたができることを、あなたの目の前にいる人に…分けて(Share)ください。
大切なことは、“いま”なのです。
“いま、できること”です。
“いま、できることを、目の前の人にする”ということが…「生きる」ということなのです。
RIKI。。。あなたには、「生きて」ほしいのです。
毎日をただただ「暮らす」のではなく、「生きて」ほしいのです。”

って。

当時、私は37歳。
サラリーマンとして、仕事もたくさん任され、やることいっぱい!充実して生きていたつもりでした。
でも、そのような時に…このヘンリさんの言葉「生きる」が、心深くまで、突き刺さったことを覚えています。
涙しながら、ヘンリさんと話したことを覚えています。

2009年11月。
そのヘンリさんのご自宅に伺った時、彼はアルツハイマー病と向き合っていました。
あの時、2002年以来、「RIKI!」って、いつも笑顔で優しく呼んでくれたヘンリさんの様相ではなく、
ソファーに座ったままで、何度も何度も同じ話が繰り返され…思い出話しが続くばかりで。。。。
時代の流れを強く感じて、「衰え」を実感した瞬間でした。

ヘンリさんは…「生き」抜きました。。。
たった一つの身体でしたが、91年間、実に「生き」ました。
でも、その「生きる」は、自分一人、一つの身体のためだけでなく、
本当に多くの「いのち」に影響や勇気、希望、歓び、安心…をGive与えて、多くの人を支えてくれました。。。

涙が…溢れてきます。
たまらなく…溢れてきます。。
ヘンリさんも多くの涙を流し、涙を視てきたと思います。
それでも…ヘンリさんは、「生き」続けました。。。
つい、先日まで。。。

本当に…ありがとうございました。
本当に…おつかれさまでした。。。
あちらの世界で…
13歳の時に離れたヘンリさんのお父さまやお母さまと、
また久しぶりに、やっと再会できたのですから…
ゆっくりと、これまで「生きた」ことをお話しください。

「いま、できること」。。。

「生きる」ということ。。。

ヘンリさんに教えて頂きました。。。
ヘンリさんに…私の人生も…学び、教えて頂きました。

私も…私たちも…「いま、できること」
そして「生きる」をヘンリさんの笑顔とともに…繋げていきます。

本当に…ありがとうございました。

ゆっくりと…休んでください。。。

これからも…語ってください。。。

ありがとう。。。
Hope&Wish公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を
代表  osumisingntegaki